ぽつ・・・ぽつ・・・・
はじめは小さな雨だった。

「あちゃー・・・濡れたらキドに怒られちゃうかなぁ」

独り言をつぶやき、その時傘をもってきていなかったカノは少し小走りに帰ることにした。
しかし次第に強くなっていき、やがてはシャワーを浴びているかのような雨に襲われた。

『あーあ、誰か傘もってきてくれないかなあ』

そんなことを考えていると、何故か雨が止んだような感覚がした。

「・・・え?」

しかし雨は降っている
どういうことだろうと辺りを見回したら、
見覚えのある赤いジャージを着た少年が立っていた。

「おい、大丈夫かよ」

と、その時すでにびしょびしょになっていたカノに
呆れた顔をしながらも心配そうな様子で問いかける。

「シンタロー・・・君・・・?」

あまりに突然の出来事に、カノはまだ状況を掴めずにいた。
シンタローはDVDでも借りに行っていたのか、
よく見かける店のレジ袋を片手にもっていた。

「傘も持たずに外にいたのか?・・・気をつけろよな」

と自分のもっている傘をカノに差し出した。
え、悪いよ。シンタローくん濡れちゃうでしょ。
カノはそう言い、そして少し間を空けてつぶやいた。

「・・・相合傘、しよっか!」

元気が良さそうに明るくいったが、やはり恥ずかしいらしく
いくら欺くのが得意なカノでも、髪の毛で隠せていない耳が赤くなっていた。

「まあ・・・いいけどよ・・・」

思ったよりも正直なシンタローに意外だなと言う顔をして、
シンタローの持っている傘に入ろうと身を寄せた。

「「・・・・」」

沈黙した気まずい空気に、早くこの時間を終わらせたいと
シンタローはやや早足気味に帰ろうとしていた。
しかしそれが気に食わなかったのか、
カノが少し控えめな声で告げた

「ねぇ、ゆっくりあるこ?僕もっとシンタローくんとこうしてたいな・・・」

恥ずかしそうな顔をしてもじもじしているカノの顔をみて
シンタローはたまらなく可愛いと心の中で叫ぶと同時に、
それとは反対な無愛想な顔をして、何も言わずにゆっくりと歩いた。
だが、彼もさきほどのカノと同様に耳が赤くなっていた。
いつもはそのような事にすぐ気づくカノも、
今では自分で精一杯で気づいてはいなかった。

それは二人にとって、雨がふっている事もわすれるくらい
傘の中の空間がまるで楽園のように感じていた。

ああ、アジトについたらこうしてくっついていられないな。
と、帰り道が短くなるにつれそうおもっていた。



アジトに着き、結局なにも話さずに着いてしまった・・・
二人は自由になったと同時に少し後悔していた。

「あ、ありがとね・・・?僕嬉しいな、シンタローくんと・・・こうして・・・その・・・」
お礼を言うと共に恥ずかしさも湧き上がってきて、うまく話せていない様だ。

「いや俺は通りすがっただけだし・・・それに、仲間を見つけて助けなかったらどうするよ?w」
と、恥ずかしさを紛らわすために少し笑ってみせた。

そんな二人を背に、後ろでこそこそ聞こえてきたことに二人は気づいた。

「うふふ・・・・ご主人、テレてますよ・・・ふへへ・・・・カシャッカシャッ」
「お兄ちゃんお幸せにっ!!!bbbbbbカシャッッ」
「シンカノhshshsペロォ・・・////カシャッ」
「ちょ、マリー声でかいしこわいよ・・・」
「・・・zzzz・・・んぁっあ、お幸せにー・・・zzzz」
「おばさん達キモ」
「お前ら少しは黙らんか」

シンタローの顔は青ざめ、そしてそれは怒りと恥が同時に襲ってきたようで

「うわあああああああ!?///お前らいつからいた?!?!?」

ありゃ?ばれちゃいましたかと笑いながら、
「最初から居ましたよ!!うふふ」
と言い、初めの方の傘を渡している写真をみせつけてきた。

すぐ消せすぐ消せと怒鳴っているシンタロー。
一方、カノの方は顔を真っ赤にしてうずくまっていた。

いい加減にしろと叫ぶシンタローを無視し、
団員達はアジトに隠れた。

「まあ、たまにはいいんじゃない?こーゆーのも・・・。」
とカノが言うと、シンタローは納得したようで
「そうだな・・・今回は見過ごしてやるか」
そう言って二人もアジトに入った。



(2ヵ月後)
 ぽつ・・・ぽつ・・・・
カノが出かけていると、小さな雨がふってきた。
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