空がオレンジ色に染まる頃。
僕と黄瀬君はいつも通り帰っていた。





『黒子っち』




君が僕の名前を呼ぶ。
何度も聞きなれたその言葉。


(黄瀬君は変わった?)


いつもと変わらないその言葉も
なぜかまったく違う人が言ったように聞こえた。




「…なんですか」



『ずっと一緒ッスよ』




口から零れたのは甘い愛の言葉。

どうしたんでしょう。
その言葉はどこか儚く、いつもの元気な黄瀬君じゃない気がした。



そう言うと黄瀬君は僕に笑いかけた。



君の不自然な笑顔。

どうしたんですか。その言葉もなぜか僕は声に出せなかった。





「…ずっと一緒、です。」



僕がそう言うと君は僕に抱きついた。


君がいつも通りに戻った気がした。
やっぱり黄瀬君はこうでなくては僕は落ち着きません。







『うそつき』








そう言うと黄瀬君はまた笑った。


それは酷く悲しそうな、今まで聞いたこともない黄瀬君の声だった。





なにを言ってるのか僕は分からない。

僕が何をしたんですか。
僕の何が嘘なんですか。







「なんで、ですか。」






黄瀬君はじっと僕を見つめて言った。




「…俺、実は未来からきたんスよ。」



その言葉に安心してしまった僕がいた。
黄瀬くんのいつもの冗談ですか。

僕は無言のまま黄瀬君を見つめた。




しばらくすると黄瀬君はまた話し始めた。




「俺はね、黒子っちが結婚しちゃう未来から逃げてきたんス。
結婚しちゃってから、俺はずっと黒子っちと話したこの出来事を思い出して、
引っかかって、一人取り残されている気がして…


悲しくて、悔しくて、なんともいえない感情で心がぽっかりあいちゃった気がしたッス。

それから俺はなんでかわからないんスけど、毎日夢の中でずっとこのシーンが繰り返されていくんスよ。

なにかしなきゃいけないって、俺やっと気付いたんス。





…俺は、黒子っちに伝えたいことがある。」





「俺、…やっぱり黒子っちの事が好きッス。」





「俺はずーーっと黒子っちの事が大好きッス。大人になってもこれから年が進んでいっても。」





君は困ったような顔で

泣きながら、笑った。




その顔は儚くて壊れそうで




「ばいばい。ありがと黒子っち」











僕の頬に涙が伝っているのが分かった。







────────





「黒子っち!?ど、どどどどうしたんスか!!!!」



酷く慌てて君は言う。
いつもの黄瀬君ですね。



「黄瀬君、ずっと一緒ですよ」




君の困ったような顔は

ひまわりのような笑顔に変わって





「もちろんッス!!」
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